エルサルバドルでビットコインが正式に法定通貨になりました。

各国の状況
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ビットコインが法定通貨に

2021年9月7日9時(日本時間同24時)、中米のエルサルバドルでビットコインが正式に法定通貨として採用されました。
仮想通貨(暗号資産)が史上初めて法定通貨となった瞬間です。
為替の世界にも大きなインパクトを与える事件で、特に最強通貨ドルを持つ米国は警戒を強めています。
他にもビットコインや仮想通貨の法定通貨採用を検討する国は少なくなく、仮想通貨は新たなフェーズを迎えようとしています。
エルサルバドルのビットコイン法定通貨化までの概要については別の記事を参照下さい。

エルサルバドルが200BTCを購入

ビットコインの正式採用を翌日に控えた9月6日、エルサルバドルのナジブ・ブケレ(Nayib Bukele)大統領は同国が200BTC分のビットコインを購入した事を明らかにしました。
エルサルバドルとしては今回の購入と併せて400BTCを確保したとのことです。
このニュースにビットコイン価格は反応し、この日の内に5万2000ドル(約570万円)まで上昇しました。

ドル経済の国

エルサルバドルには元々コロンという自国通貨が流通していましたが、2001年1月に米ドルへの全面転換が行われ、現在ではほぼ米ドルが流通する経済となっています。
こうした国は決して珍しい訳では無く、東南アジアのカンボジアなどもドルが流通する実質的な米ドル経済となっています。
実質的に自国通貨が無い国家であることがビットコインを採用する大きな背景としてあります。
またエルサルバドルでは国民の7割が銀行口座を持っておらず、海外からの送金も高い手数料を払ってブローカーに送金を頼んでる状況があります。
ビットコインであれば、仲介業者を間に入れることなく、早く安く安全に送金をすることが期待できます。
ブケレ大統領は、ビットコインの法定通貨採用によって海外から本国に送金する際の手数料が数百万ドル節約できるとの見通しを明らかにしています。

ドルとビットコインの併用

エルサルバドルは通貨をビットコインに全面転換するのでは無く、米ドルと共にビットコインを法定通貨に採用するという形を取ります。
日常生活ではこれまで通り米ドルで支払うことができます。
ロイター誌報道によれば、エルサルバドルの世論調査では人々はビットコインのボラティリティー(値動きの幅)の高さを警戒しており、使用には懐疑的だとのことです。
政府当局も国民生活が大きく変わる事は無いと考えている様です。
ただ海外送金がビットコインに変わる動きは加速すると見られます。

エルサルバドル

エルサルバドルは九州の半分ほどの国土に約664万人の人口を抱える中米の小国です。
2020年の国内総生産額(GDP)は246億ドル*ほどで、日本の徳島県や佐賀県と同じくらいの経済規模しかありません。
輸出品もバナナやコーヒー位で有力な産業も無く、国民生活は大きな部分を海外の出稼ぎ労働者からの送金に頼っています。

** 2020年 IMF発表データによる。

ビットコイン法定通貨化のメリット

エルサルバドルがビットコインを法定通貨化するメリットとしてはどの様な項目が考えられるでしょうか。
主なメリットとしては以下の様なものが考えられます。

●ドル依存からの脱却
●ビットコインの価格が上がる可能性

ドル依存からの脱却

エルサルバドルは米ドルが流通する経済環境なので米国の通貨政策の影響をもろに受けてしまいます。
ビットコインを採用することで米ドルへの100%依存の状態から脱却し、米国の政策に対抗できる可能性があります。
反米感情が残る地域でもあるので、こうした対抗手段を持つことは政治的にも有効だと言えそうです。

ビットコインの価格が上がる可能性

法定通貨特に新興国の通貨が米ドルに対して下がることはありますが、大幅に上がることは殆どありません。
一方でビットコインは今後数倍、あるいはそれ以上に価格が上がる可能性もあります。
そうすれば国の資産や国民の資産が大きく増えることになり、大きな利益をもたらします。
国民をギャンブルに巻き込んでいるとの指摘もありますが、貧しい国が豊かになるための賭けとしてはあり得る方策なのかも知れません。
但しもちろん価格が大幅に下がる可能性もあります。

ビットコイン法定通貨化の問題点

一方、エルサルバドルがビットコインを法定通貨化する上での問題点、デメリットとしてはどの様な項目が考えられるでしょうか。
主な問題点としては以下の様なものが考えられます。

●準備金の確保
●値動きが激しい
●通貨体制の複雑化
●通貨政策が打てない

準備金の確保

ビットコインの法定通貨化によって、エルサルバドルの金融機関は準備金としてビットコインを保有する必要に迫られます。
米ドルに加えてビットコインを抱えなければいけないので資金負担は大きくなります。
エルサルバドルの金融機関の財務は強固では無く準備金が経営を圧迫する恐れがあります。
エルサルバドルには中央銀行が存在しますがビットコインの発行はできないため、市場からビットコインを調達し続けなければなりません。

値動きが激しい

ビットコインの値動きが激しいことも大きな懸念事項です。
ビットコインの価格は過去に9割もの下落を起こしたことがあります。
価格が上昇している時には良いですが、暴落した時には準備金を持つ政府機関、金融機関は財政危機や経営危機に直面する一方、国民はビットコインを米ドルに変えようとします。
貿易の支払いもできなくなり、国家の危機になりかねません。
こうした価格変動リスクにどれだけ対応できるかが法定通貨化の鍵になります。

通貨体制の複雑化

通貨体制の複雑化に対応できるのかという懸念も残ります。
ビットコインの上昇局面では国民はドルで支払おうとし、下落局面ではビットコインを使ってしまおうとします。
ドルとビットコインのバランスを一定の範囲に抑えることは至難の技で、そうした変化に政府が対応していくのは難しいと考えられます。

通貨政策が打てない

ビットコインはエルサルバドルが発行できる訳でも関与できる訳でもないため、インフレなどに対して基本的に通貨政策を打てないという問題があります。
但しこれは米ドルに対しても同じことで、エルサルバドルは米ドル経済に対して殆ど通貨政策を打てずにきたので状況は変わりません。

ビットコインは為替商品⁉

一国の法定通貨となればビットコインは外国通貨となるのでしょうか。
この点についてはJPYC株式会社岡部代表が金融庁に照会をしており、2021年7月時点で金融庁からは「ビットコインは外国通貨に該当しない」との回答だったとツイートで明らかにしています。
少なくとも現時点の日本では仮想通貨(暗号資産)のままという規定の様ですが、かなり苦しい解釈の様にも思えます。
通貨の規定に一石を投じる事件であることは確かです。

今後の展開

エルサルバドルのビットコイン採用がどの程度国内に浸透するかはまだ不透明ですが、エルサルバドル経済が混乱せずに新通貨体制に移行を果たした時には多くの国に影響を与えます。
既にパラグアイやエクアドル、アルゼンチン、カンボジアといった国でビットコインや仮想通貨の法定通貨化を検討する動きがあります。
そうなるとドルを中心とした為替市場に無視できない新勢力が生まれ、大きく情勢が変化する可能性もあります。
各国がビットコインを取り合う様な展開になったら価格は大変なことになりそうですね。

まとめ

ビットコインが世に出てから十数年でビットコインは一国の法定通貨として採用される段階まできました。
ビットコインあるいは仮想通貨が何を変え何を解決していくのか、エルサルバドルはその重要な試金石になりそうです。
願わくば少しでも良い世の中になって欲しいですね。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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