IRON(TITAN)とは⁉価格が2日で9億分の1になった仮想通貨と暴落の背景

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仮想通貨市場最大の大暴落

アイアン・ファイナンス(Iron Finance)が発行するIRON Titaniumトークン(TITAN)は、2021年6月16日に時価総額20億ドル(約2,200億円)にまで膨れ上がりながら翌日にはほぼ無価値となるという空前の大暴落を起こしました。
このTITANについては複数の仮想通貨系インフルエンサーが「現代の錬金術」として推奨していたこともあり、日本でも損失を被った人が少なくない様です。
今回は仮想通貨(暗号資産)の世界に大きな衝撃を与えているTITANの大暴落について解説します。

■通貨名称 IRON Titanium
■通貨記号 TITAN
■過去高値 5,780円(2021.06.16.)*
■過去安値 0.000006615円(2021.06.18.)*
■公式HP  https://iron.finance/

*CoinmarketCap発表データによる

価格が1/9億に⁉

もう少し詳しく今回のTITANの暴落について説明します。
2021年6月16日、TITANの価格は5,780円まで上昇し時価総額約2,200億円の規模にまで拡大していました。
65ドル(約7200円)の値が付いた分散型取引所もあった様です。
ところがその後TITANの価格は一気に暴落し、翌6月17日には0.000587円となりました。
たた一日で約1/1000万の価格になった訳です。
更に翌日の6月18日には価格が0.000006615円にまで下落します。
実に約1/9億という訳がわからない程の暴落っぷりです。
約2,200億円にまで増えた時価総額はたった二日間で250円程になってしまいました。
仮想通貨(暗号資産)の世界のみならず、金融商品全体でみても記憶にないくらいの下落です。
エンロンショック(米国株)もBREXITの南アフリカランド下落(FX)もTITANに比べたら可愛く見えてきます。
何故この様な事態が起こってしまったのでしょうか。

鉄とチタン⁉

アイアン・ファイナンスは米ドルと価格が連動(USDCと連動)したステーブルコインIRON(アイアン)と、今回のTITAN(チタン)という2つのコインを発行しました。
IRONは米ドル連動型のステーブルコインであるUSDコイン(USDC)TITANに裏付けられて1ドルの価値を保持する様に設計されたコインです。
IRONは2021年3月にバイナンスの独自ブロックチェーンであるバイナンススマートチェーン(BSC)で稼働するコインとして公開されました。
2021年5月にはポリゴンチェーン版も公開されています。

ステーブルコインとは⁉

ステーブルコイン(Stable Coin)は価格変動が少なくなるように設計された仮想通貨の総称で、一般的にはドルやユーロなどの法定通貨と価格を連動させたコインを指します。
法定通貨の価格と連動(ペッグ)させるという意味で「ペッグ通貨」と言われることもあります。
ビットコインなどと違って価格は基本的に法定通貨と同じなので、値上がり差益を狙う投資対象とには余りなりませんが、仮想通貨市場にとっては非常に重要な意味を持っています。
ドルと連動させたステープルコインとしてはテザー(USDT)MakerDAI(DAI)などが知られています。
USDコイン(USDC)も、サークル社コインベースが共同で開発したドル連動型のステーブルコインの1つです。

IRONの価格安定の仕組み

IRONは独特の仕組みによって米ドルと同じ価格を維持する設計になっていました。
アイアン・ファイナンスが展開するプラットフォームにUSDコインTITANを預け入れることでIRONが発行されます。
一般的にステーブルコインは法定通貨の準備金を用意して、仮想通貨を法定通貨に等価で交換できることで価値の信用を維持しています。
IRONの場合は75%をUSDコイン25%をTITANで預けることでをIRONを発行するすることができました。
但しこの割合はIRONの価格に応じて変わり、IRONがUSDCより高くなると発行時にUSDコインの割合が上がり、準備金の中でのUSDコインの比率が大きくなります。
多くなった分のUSDコインはTITANの購入に当てられます。
TITANの価格は上がり、IRONの新規発行が増えて1USDCの価格に収束していきます。
1IRONが1USDCより低くなると、これと逆の作用になります。
こうした仕組みによって価格を維持できるとされていました。
またIRONを発行すると預けたTITANはロックされて流通しなくなります。
IRONが発行されるほどTITANの流通量は減り、TITANの価格が上昇しやすくなるという仕組みになっています。

QuickSwapとの提携

QuickSwapポリゴン(Polygon)というネットワーク上で稼働する分散型取引所(DEX)です。
分散型取引所はイーサリアムのネットワーク(ブロックチェーン)を使って作られたものが多いですが、イーサリアムの送金手数料の高騰という問題が深刻化していました。
ポリゴンは圧倒的に安い送金手数料と処理速度の速さが魅力のネットワークで、ここで稼働する最大の分散型取引所がQuickSwapです。
2021年6月3日にアイアン・ファイナンスはこのQuickSwapとのパートナーシップを発表し、連携していくことが明らかになりました。
アイアン・ファイナンスが発行するIRONTITANもQuickSwapに上場し、QuickSwapの重要コインとして活発に取引されていく事が期待されました。

ノーリスクで年利400%⁉

QuickSwapSushiSwapでは2つのコインをペアにして預けると金利が貰える仕組みがあります。
分散型取引所(DEX)の要とも言える「流動性の提供」という仕組みなのですが、ここで注目されたのがIRONUSDコインのペアで非常に高い予想金利が示されたことです。
流動性の提供では、ペアにしたコインの片方の価格が暴落する(高騰する)ことによる損失リスクがあるのですが、IRONもUSDコインも米ドル連動型のステープルコインなので一方だけの価格暴落リスクは無いことになります。
QuickSwapでもSushiSwapでもIRON/USDCでの流動性提供の報酬としてはTITANが付与されるのですが、想定年利で400%を超える利率が表示されました。
一時は9,500%以上の金利が示されたこともありました。
提供する資産はドル連動型のコイン同士なので価格変動リスクが無いのに、どんでも無い利率でTITANが貰える。
しかもTITANの価格が上昇する期待も持てる。
こうした思惑によってIRONTITANに大きな投資チャンスがあると考えられたのです。

現代の錬金術

国外、国内の著名人インフルエンサーがこの仕組みに注目して盛んに発信したことも問題を大きくしました。
米国の実業家・投資家でNBAダラス・マーベリックスのオーナーとしても知られたマーク・キューバン(Mark Cuban)氏が投資をしていたことでも注目されました。
キューバン氏は今回の暴落でかなりの損失を被った様です。
日本でも複数の仮想通貨系インフルエンサーがこのスキームに注目し、盛んに発信していました。
中でも多くのフォロワーを抱え、YouTuberでもある某インフルエンサー氏などは「現代の錬金術を見つけたかも知れない」と何度も推奨していたためにTITAN暴落後は批判が集中しています。

クジラによる売却

但しこの「錬金術」は呆気なく終焉を迎えます。
2021年6月16日、QuickSwapにIRONUSDCのペアで流動性用の資産を提供していた大量保有者(クジラ)が、IRON/USDCの流動性提供を解除し、更にTITANをIRONに換え、次にはIRONをUSDコインに交換しました。
これによってTITANの価格はわずか2時間ほどの間に54%も下落し、IRONも価格がUSDコインから乖離してしまいました。
これによってTITANの売却が殺到し、未曾有の大暴落を引き起こしたのです。

何故売られたのか

IRONは1IRONを0.75ドル分のUSD コイン0.25ドル分のTITANに交換することができました。
IRONの価格がドルから乖離して下がった瞬間、IRONを買って直ぐにUSDコインとTITANに交換してTITANを直ぐに売却すれば差額が利益となります。
IRONの価格が0.9ドルに下がった例を使って整理すると以下の様な手順になります。

①.IRONの価格が1USDC→0.9USDCに下がる
②.IRONを購入する
③.USDコイン(0.75USDC)とTITAN(0.25TITAN)に交換する。
④.TITANを直ぐに売却する
⑤.IRONを購入する

これを大量に、しかもシステムを組んで高速で繰り返した訳です。

リーマンショックの時と同じ

今回のスキームは仮想通貨に詳しいインフルエンサーでさえ飛びつきたくなる様な内容だった訳ですが、問題を見破るのは難しかったのでしょうか。
個人的には株式などを広く扱う投資家、とりわけ証券取引に詳しい人であれば比較的容易に問題を見破れたと思っています。
リーマンショックを引き起こしたサブプライムローンの時に連発された、優良な債権にジャンク債を混ぜて高利回り債を売りつける手法とそっくりだからです。
証券を扱う人であれば真っ先に学ぶべき内容です。
実際TITANの価格が上がる中でも警告を発する声は少なからずありました。

まとめ

DeFi(分散型金融)の投資は今までに無かった新しい投資機会を私達に与えてくれているのは確かです。
ただDeFiの歴史は浅く、システムも制度もまだまだ未熟です。
脆弱な部分は直ぐに標的にされ、サービスが崩壊する危険を孕んでいます。
今回のTITANの大暴落はまさに開発したシステムの脆弱さを突かれた形で起こりました。
特に流動性提供などの投資では自己責任が大原則で、損失を補填する仕組みもありません。
どういうコインでどういう投資なのかも理解しないまま投資するのは止めましょう。
インフルエンサーが何を言おうと同じです。
知識と経験を増やして資産を上手に増やして下さい。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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