CBDCの各国の計画は!?先行する中国と日本、米国、韓国などの展開を追います。

各国の状況
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各国のCBDC政策

前回の記事では、Facebookが開発を進める暗号資産(仮想通貨)「Libra」と中国の「デジタル人民元」計画によって、各国がCBDC(中央銀行発行デジタル通貨)を真剣に検討し始めているという話を中心に紹介しました。
そこで今回は日本や米国など各国のCBDC計画がどの様な状況にあるかという点を紹介していきます。
CBDCの内容については前回の記事を参照下さい。

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中国

中国では暗号法(密碼法)が既に施行されており、欧米諸国に先んじる形で2014年からデジタル人民元(DCEP)の開発が始まり、発行に向けた準備が進んでいます。
ブロックチェーン技術を盛り上げ、産業振興に繋げて行く方針も打ち出されています。
中国はドルを基軸に回っている世界経済の中で、人民元の弱さを思い知らされてきました。
覇権をも狙う国家の必然として、人民元の国際的な普及を狙っており、デジタル人民元がその大きな武器と言えます。
特に中国との関係の強いアフリカ諸国でのデジタル人民元の展開が進むと予想されています。
中国は国内的にも深刻な偽札の流通問題や資本の海外流出の問題などを抱えており、OBDCへの意欲は強いと見られます。
中国人民銀行(PBOC)は基本設計は既に完了したと発表しており、深セン・蘇州でのテスト運用が予定されています。
国営銀行や大手通信会社とも連携して、中国内外への浸透を進めていこうとしています。

既に都市部を中心にキャッシュレス化が著しく進んでいるだけに、少なくとも中国国内ではデジタル人民元が一気に浸透する可能性が高そうです。

欧米諸国

デジタル人民元やFacebookのLibraの動きに背中を押される形で日本や欧米各国のOBDCを巡る動きも活発化してきました。
日本、イギリス、スイス、スウェーデン、カナダの中央銀行は、国際決済銀行(BIS)と共同してCBDCの研究を目的としたワーキンググループを設立しました。
世界の政治・経済のリーダーが一同に介する年次総会(ダボス会議)で知られる世界経済フォーラム(WEF)も、デジタル通貨に関する国際的なガバナンスの設計に向けてコンソーシアムを設立しています。
各国の金融当局や金融機関はデジタル人民元やLibraの潜在的リスクをはっきりと認識し、対応を迫られていました。

日本

日本はOBDCの議論が遅れていた国の1つだったと言えます。
それでも国内の大手金融機関を中心に、日本円とリンクしたデジタル通貨の研究は進められていました。
三菱銀行などを擁するMUFGグループは日本円と等価の暗号資産(仮想通貨)である「MUFGコイン」の開発を進めていました。

またみずほ銀行は地方銀行約60行と連携して電子マネー「Jコイン」を推し進めていました。
Jコインは暗号資産(仮想通貨)では無く、あくまで電子マネーの発展系としてのコインですが独自のデジタルコインを流通させて行こうとしていた点では同じです。
こうした土壌があったお陰で、いざ方向性が固まると早いという日本らしい展開が見えてきました。
2020年6月には暗号資産交換業者のディーカレットが事務局となり、日本のメガバンク3社や数々の大手企業、各省庁が集結して、日本版OBDC(デジタル円)を含めたデジタル通貨に関する勉強会を開催することが明らかになりました。
勉強会は6月から9月まで開催され、報告書の形でまとめる予定です。

具体的なデジタル円の検証などはまだ始まっていませんが、キャッシュレス化という大きな枠組みの中で、デジタル円の議論も進められています。

米国

世界最強の法定通貨”ドル”を抱える米国は、日本同様にCBDCに消極的なスタンスを取ってきた国と言えます。
米ドルが世界の基軸通貨であり続けているため、米国が主要国で最初のCBDCを発行する国になるべきではないという認識が金融当局者の一般認識であったと言えるでしょう。
但し2019年にFacebookのLibraと中国人民元の計画が大きく報道されるようになり、CBDCの議論を無視できなくなりました。
2019年には米国連邦準備銀行(FRB)を構成するフィラデルフィア連邦準備銀行のPatrick Harker総裁が、FRBはデジタル通貨の発行を避けられないとの見通しを語っています。
CBDCとは別に米国では米ドルと価格をリンクさせた暗号資産(仮想通貨)、いわゆる「ステープルコイン」が相当に充実しています。
ステープルコインの代表格USDTは暗号資産全体でも第5位の時価総額を誇り、USDT以外にも米ドルとリンクしているコインが幾つも存在しています。
但し民間のステープルコインは法定通貨では無く、通貨政策に用いることもできません。
政府・通貨当局としては何時デジタルドルの発行を考えてもおかしくはありません。

韓国

韓国は中央銀行である韓国銀行(BOK)が、CBDC発行について否定的なスタンスを取っていました。
CBDCは金融政策に悪影響であり、銀行の預金残高が減少して経済の不安定化に繋がるというのがその理由です。
但し韓国銀行のスタンスも2020年に入るとかなり変化が見られ、4月6日にCBDCの提案を再評価したと報じられています。
韓国銀行は2020年4月から22カ月の試行実験を行ない、デジタル通貨化の技術的、法的な影響について評価するとしています。
国際的な環境の急速な変化に対して積極的なスタンスに転じる姿勢を固めたと見られます。

まとめ

日本や欧米諸国ではOBDCに関しては、その利点を認めつつも、銀行と競合して業務を脅かす点や、技術的信頼性への不安などから発行に消極的なスタンスが一般的でした。
強い法定通貨を抱える国では特にその傾向が強く出ていました。
正直な所、銀行など金融当局と関係の深い既存勢力の利益に配慮したとも思える及び腰な態度でした。
ただそれもLibraデジタル人民元という外圧によって激しく揺さぶりを掛けられ、各国はOBDCの是非を真剣に発行を考えて行かざるを得ない状況に追い込まれました。
今後各国でOBDC発行に向けた動きが急速に進むと見られます。
OBDCの動向に注意して行きましょう。
今日も最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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