デジタル人民元が実現か!?
主要国の中央銀行が手掛ける暗号資産(仮想通貨)としては初めてのものになると見られる、中国の通称「デジタル人民元」が現実味を増しています。
ベネズエラなど一部の国では政府機関の発行する暗号資産(仮想通貨)が存在していますが、一定の影響力を持つ国の中央銀行が発行する通貨としては最初の事例になると見られています。
各国の中央銀行によるデジタル通貨発行の流れを加速し、世界の金融業界にも大きな影響を与え得る動きと言われています。
今回は中国のデジタル人民元を巡る動きを紹介したいと思います。
キャッシュレス大国・中国
中国は日本を遥かに上回るペースでが「キャッシュレス化」が進んでいます。
特に都市部ではキャッシュレス化の進行が顕著で、スマートホンによる決済が当たり前のように行われています。
上海などの都市部では普段は現金も財布も持ち歩かないという人も珍しくはありません。
屋台の店舗でもキャッシュレス決済が浸透していて現金を受け付けない店もある状況です。
暗号資産(仮想通貨)では無くQRコードによる電子決済が中心ですが、明らかに日本よりも浸透しています。
偽札問題
中国でキャッシュレス化が急速に進んだ背景にはいくつかの理由が考えられますが、大きな理由の1つとして人民元紙幣の「偽札」問題があげられます。
実際、中国では偽札事件のニュースが後を絶ちません。
中国の銀行には偽札鑑定機が置いてありますし、街の店舗でも店員がお札の真贋をチェックする光景が見られます。
ATMから偽札が出てきたといったなどというニュースもあるそうです。
ニュースの真偽はともかく、中国の一般市民が市中に出回っている紙幣の中に偽札が一定数あると信じているのは確かです。
そうした状況の中、中国では紙幣でのやり取りよりもキャッシュレス決済の方が安全と受け止められているのです。
中央銀行が発行するデジタル通貨
こうしたキャッシュレス経済の浸透を背景に、中国ではデジタル通貨「デジタル人民元」の準備を進めています。
アリペイなどの電子マネーと大きく異なるのは、発行元が民間企業ではなく中央銀行である中国人民銀行になるという点です。
2019年10月政府系シンクタンクである中国国際経済交流センターの黄奇帆副理事長が、「中国人民銀行が世界で初めてデジタル通貨を発行する中央銀行となる」との見通しを示し、デジタル人民元発行を示唆しました。
準備は進行中
中国の中央銀行にあたる中国人民銀行は、2020年4月から深圳、雄安、成都、蘇州の4都市で「デジタル通貨電子決済(DC EP)」の実証実験を行っています。
2020年5月26日には、中国人民銀行の易綱総裁は「今のところデジタル人民元発行についての明確なスケジュールはなく、現在行っている実証実験はデジタル人民元の正式な発行を意味するものではない」と発言しました(中国人民銀行の公式サイト)。
但しその一方ではデジタル通貨電子決済(DC EP)の実用レベルでの設計、標準仕様の策定、共同での動作確認が完了していることを認めています。
ブロックチェーン技術は既に利用できる
前述した様に中国では既にキャッシュレス化が進んでいるので、デジタル人民元の発行についても制度的な障壁は比較的少ないと見られています。
技術面についても既に中国系の優れた暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーン企業が幾つも存在しており、こうした技術を利用することでデジタル人民元を発行させることが可能です。
デジタル人民元のメリット
デジタル人民元の発行による大きなメリットとしてはやはり偽札のリスクを減らすことが挙げられます。
但しメリットはそれだけではありません。
ブロックチェーン技術を利用すれば、管理する側は取引記録を全て追跡することができるので、脱税などをどこまでも追いかけることが可能になります。
中国共産党や国家に反逆するグループの資産を抑える、といった行為も容易になります。
政府がデジタル人民元を推進しようと考えるのは、ある意味必然といえるかも知れません。
まとめ
中国が世界に先駆けての導入を検討しているデジタル人民元は、実証実験から実用化という段階を迎えようとしています。
13億を超える国民を抱える中国で暗号資産(仮想通貨)を使ったデジタル人民元が発行されれば、暗号資産(仮想通貨)にも多大な影響を与えることは間違いありません。
中央集権的な通貨と非中央集権的な通貨との勢力争いが激化していくことも確かです。
その流れをみるためにも、デジタル人民元の動きを今後も注意深く見ていく必要があります。
今日も最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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