ICOとは何か

暗号資産(仮想通貨)
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新しい発想の資金調達方法

ICO(Initial Coin Offering)はブロックチェーンの技術を利用した新しい資金調達の方法です。
単に資金の調達方法というだけでは無く、企業の在り方や金融業の在り方にまで大きな影響を与えかねないほど強いインパクトを持つもので、既に大きな成果を挙げています。
一方でその革新性とスピードに各国の法制度の整備が追い付いておらず、 大きなひずみを残してもいます。
今回はICOとはどの様なものか。 その利点や問題店について解説します。

資金調達は大変です

企業や個人が事業資金を必要とする時、 これまでは以下の調達方法が一般的でした。

・金融機関からの融資を受ける
・社債を発行する
・株式を売り出す

融資を受ける

金融機関(主に銀行)から融資を受けるというのは簡単な事ではありません。
詳細な事業計画書を作って審査を受け、 しばしば担保も要求されます。
事業とは関係の無い自宅を担保に差し出すという事例も日本では未だ普通に見られます。
当然、融資によって得た資金には返済義務があるので、期日迄に所定の利子を付けて返済しなければいけません。
社債についても返済義務や利子がある点では同じです。

株式を売り出す(公開する)

一方、 株式の売り出しによって得た資金には返済の義務がありません。
利益が出た時には配当を期待されますが、それも義務では無く、 利益が出ていなければ本来は配当も必要ではありません。
証券取引市場に上場して株式を公開すれば、 返済義務の無い巨額の資金を手に入れる事ができます。
株式会社であれば、創業者や経営陣、 初期の投資家が相当な割合の株式を保有している事が一般的なので、 株式公開によって事業資金と共に、そうした株式保有者にも多大な利益が斎される事になります。
とは言え株式の公開は簡単ではありません。
証券取引市場への上場の為には、各市場の定める業績や事業規模などの基準を満たして審査を通過する必要があります。
以前よりは条件が緩和されているとは言え、上場のハードルは相当に高いです。
東京証券取引所の4市場への上場企業は併せて約3, 613社(2018年4月1日現在)で、日本の法人企業数約170万社の内0.21%程度しかありません。
東証1部上場の企業となると2,084社で、 全法人企業の0. 12%しか存在しません。
これから事業を展開しようとする企業、 ましてや個人起業家には全く利用のしようがありません。

ベンチャー投資

これに対し、米国などではスタートアップ投資(ベンチャー投資)といったマーケットが特にシリコンバレーなどで拡大しています。
新しい企業や起業家でも、 優れた事業アイデアやプランがあれば大きな額の出資を受けられるケースが出ています。
ただ日本では、 まだまだベンチャーキャピタルに流れる資金は少ないと言う現実があります。
米国シリコンバレーのスタートアップ投資にしても、投資家側の事業やリターンへの条件や要求は相当に厳しく、 決して簡単に資金集ができる様なものではありません。
こうした状況の中で、全く新しい発想の資金調達手段として登場し、注目を集めたのがICOと言う資金調達方法なのです。

ICOとは

ICO (Initial Coin Offering)とは、独自トークンの販売による資金調達という手法の事です。
株式市場のIPO (Initial Public Offering=新規株式公開)を模した仕組みです。
IPO(新規株式公開)の場合は、企業が証券取引所に株を上場し、株式を売りだす事で資金を集めます。
これに対してICOでは、事業者が独自のトークンを売り出す事によって資金を得ます。
売り出す物が株なのかトークンなのかと言う点が、まず大きな違いになります。

トークンとは何か!?

ではトークンとは何かと言う話になるのですが、実は明確には定義が定まっていません。
技術的には既存のブロックチェーンに乗せて作られたコインがトークンと定義される事が多いですが、必ずしも実体に合っているとは言えません。
現象的には、企業や個人が独自に発行したコインがトークンであり、 トークンが認知され多くの取引所で売買される様になるに従って、次第に暗号資産(仮想通貨)として認識される、と言うのが実体に近いと思います。
現在ではイーサリアム (ETH)やネム(XEM)と言った暗号貧産が持つ機能を使えば簡単にセキュリティのしっかりしたトークンを発行する事ができます。
企業が商品券やサービス券を発行する様に、事業者がトークンを発行できる訳です。
そしてこのトークンを売りだして事業資金を集めようと言うのがICOと言う方法なのです。
世界中から資金を集められる
ICOはネット上で告知から資金調達までを完結する事が可能な為、企業や事業者が独自でICOをやりますよ、と告知してトークンを販売し、 お金を集める事さえも可能です。
実際、ICOの初期には、事業者自身がICOの実施を発信して資金を集めるケースが殆どでした。
トークンの代金を日本円などの法定通貨で受け取ると、通常はそれぞれの国の法律(出資法など) に思いきり触れる事になりますが、ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨(暗号資産)で支払って貰えばこの問題も解決できます。
更にはこれによって世界中の投資家や個人からお金を集める事が可能になります。

日本発の大型ICO

日本で最初の大型ICO案件は、テックビューロ社が進めるプラットフォーム事業「COMSA」 のICOでした。
大阪に本社を置き、ブロックチェーン事業を手掛けていたテックビューロ社では、事業者がICOをスムーズに行う事ができるプラットフォーム(基盤、 土台)を作りたいと考え、プロジェクトの名前をCOMSAとする事業計画を立てました。
テックビューロ社は、2017年にCOMSAプロジェクトに関するホワイトペーパー(事業計画書)をネット上に公開し、 資金調達の為にCOMSAトークン(CMS)を発行・販売する事を予告しました。
COMSAのICOでは、10月2日から11月6日までの僅か1ヶ月間に、 実に108億円もの資金を集める事に成功します。
一般的には全く知名度も無く上場もしていない無名企業が、いきなり100億以上の資金を自分で集めてしまったという事実は仮想通貨業界は勿論、 証券会社や銀行など金融業界全体に大きなショックを与えました。
将来銀行や証券市場の存立基盤をも脅かしかねない仕組みとして受け取られたのです。

トークンは何に使えるのか

こうしていきなり108億円もの巨額の資金を集めたCOMSAのICOですが、実はICOに参加した人の多くは自分が購入したCOMSAトークン(CMS)の価値を計りかねていた模様です。
ICO開始後は、COMSAトークン(CMS)を買ったが何に使えるのか?といった声がネットに溢れていました。
ホワイトペーパー(事業計画書)にも、COMSAの事業概要については書かれていてもCOMSAトークン(CMS)についてはCOMSAで行われるICOでの支払に使える事くらいしか分からず難解です。
多くの人が詳しい内容を殆ど理解しないまま期待値だけでCOMSAトークン(CMS)を購入し、その結果として短期間で108億円もの資金が集まったという訳です。

ICOに参加する目的

では多くの人は何を期待してトークンを購入したのでしょうか。
テックビューロ社は今回のICOで販売したCOMSAトークン(CMS)を、 自社で運営する暗号資産取引所「Zaif」に上場させしました。
取引所に上場された事でCOMSAトークンには他の暗号資産 (仮想通貨)と同じ様に価格が付き、売買ができるようになりました。
販売された時の価格よりも取引所での価格が上がれば、 保有者は価格差益を得る事が可能です。
多くのユーザーはの目的はこの価格差益獲得に他なりません。

トークンを上場させる

COMSAのICOで108億円の資金を集めたテックビューロ社は、計画通り、ICOの為のプラットフォーム·サービス「COMSA」 を開設します。
COMSAはICO案件を集めた「市場」でもあり、 事業者は自分でICOを1から準備して展開するよりもCOMSAの場を利用した方が円滑にICOを実施する事ができます。
COMSAに魅力的なICO案件が集まる様になれば、 より多くの資金がCOMSAの案件に流れ込んでくる事が期待できます。
またCOMSAのブラットフォームで実施されるICO案件では、 販売されるトークンの支払にはCOMSAトークン(CMS)が使われます。
ICOに参加する為にはCOMSAトークン(CMS)を持っている必要があります。
従ってCOMSAのプラットフォーム上でのICOが活発化する程、 COMSAトークン(CMS)の需要が高まり、価値が上がると言う関係になります。
テックビューロ社は自社で展開していた取引所Zaifにトークンの取引所を開設し、COMSAのICOで販売したトークンをZaifに上場すると言う仕組みを整備しました。
これによって各トークンの流動性を高て、多くの資金を呼び込もうとした訳です。
この様にICOで販売されたトークンが取引所に上場されれば、それを好きな時に換金する事ができます。
もちろん、価格上昇による価格差益を狙う事もできます。

ICOの問題点

ICOでは事業計画さえあれば、それを基に短期間で多くの資金を集める事が可能です。
この自由度とスピード感はICOの非常に大きな魅力ですが、同時に大きな問題点でもあります。
つまり現状では、何となく凄いイノベーションが起きそうなホワイトペーパーを公開してトークンを売りだせば、それで資金を集められてしまうのです。
特にICOの初期にはこの傾向がはっきりと出ていました。
事業計画をしっかり実現できるのか、 技術的な裏付けや事業展開の体制が殆どないICO案件もたくさん出てきました。
詐欺的な案件も多発していました。
実際、トークン販売、 仮想通貨のプレセールなどと称した詐欺行為が多発しています。
今やトークンは個人でも容易に、 しかも安価に発行できます。
そうしたトークンを、価値の裏付けも無いまま人に売り付けてしまおうと考える人も大勢いるのです。
しかも2017年まではトークンも仮想通貨も法的な定義自体が暖味で、 ある意味やりたい放題な環境にありました。

存在感を増すICOプラットフォーム

その意味でICOのルールや手続きを自ら整備して、取り扱うICO案件の信頼性を担保するCOMSAの様なプラットフォームの存在は重要性を増してきます。
投資家(個人)に替わって、プラットフォーム側(例えばCOMSA)がICO案件の内容を良く精査し、この案件は大丈夫なら大丈夫ですよと言う形で販売する事で信用を生み、より多くの資金を集める事ができるのです。

まとめ

ICOは、世界中でいきなり短期間に数十億、 数百億円単位の資金を調達する成功事例が続発し、金融の在り方さえ変えてしまうかも知れない手法として大きな衝撃を与えました。
一方では事業の裏付けが乏しい案件や詐欺案件、 マネーロンダリング目的の案件なども続々と生まれ、投資環境としての危険性が高まっていました。
国境を越えて世界中から資金を集められる、 あるいは参加できると言うメリットの反面、 各国の法律や制度の整備が追い付かず、投資家が守られない状況となっていたのは大きな課題です。
ようやく2018年3月のG20 (ブエノスアイレス) 辺りから各国の法整備に向けた取り組みが始まり、ICOの規制についての国際的議論が本格化します。
その後、世界の金融の中心と言える米国の証券取引委員会がICOへの見解を積上げて方向性を明らかにした事で、 多くの国がこれに倣った対応を打ちだし、ICOは新しい段階に入ったと言えます。
ICOをより信頼性の高いものに発展させたIEO、 STOと言った仕組みも整備されつつあります。
今後はIEOやSTOがシーンの中心になってくると考えられます。
いずれにしても新しい資金調達の方法が、今後どの様に社会に浸透して行くかについては、大いに注目していきたい所です。

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