各国の暗号資産環境について
コイン資産倶楽部では、各国の暗号資産(仮想通貨)の市場やブロックチェーン・プロジェクトの状況などを纏めています。
各国の暗号資産状況、今回は世界最大の経済大国・米国です。
世界経済の中心であり、起業家の多い米国では、多くの有力なブロックチェーン・プロジェクトが生まれています。
米国は暗号資産(仮想通貨)の情勢を考える際には外せない、非常に影響力の大きな市場でもあります。
また米国の規制は事実上の国際標準になることも多いので、米国の法制度を理解しておくと世界の市場も理解しやすくなります。
米国の暗号資産環境について、一度確認しておきましょう。
各分野の詳細についてはそれぞれ別の記事で展開して行きます。
アメリカ合衆国
米国(アメリカ合衆国)は世界最大の経済大国であり、政治的にも軍事的にも世界をリードする立場にある国です。
日本の約25倍の面積の国土に約3億3000万人の人口を抱えています。
■国名 アメリカ合衆国
■首都 ワシントンDC
■人口 3億2775万人
■面積 962.8万平方km(日本の約25倍)
■GDP 20兆5802億ドル(1位)*
■通貨 ドル(1ドル≒107円)***
*2019年IMF発表データによる。
** 2018年5月米国国勢局発表による。
***2020年7月10日の通貨レートによる。
米国の暗号資産環境のメリット
米国の暗号資産環境のメリットとしてはどの様な点が挙げられるでしょうか。
主な項目としては
●世界最大の暗号資産市場
●暗号資産プロジェクトが多い
といった点が挙げられます。
米国の暗号資産環境のデメリット
米国の暗号資産環境のデメリットとしてはどの様な点が挙げられるでしょうか。
主な項目としては
●SECの規制
といった点が挙げられます。
世界最大の暗号資産大国
米国は法定通貨のみならず暗号資産(仮想通貨)においても世界最大の国と言えます。
米ドルでの取引に加えて、米ドルにペッグしているテザー(USDT)での取引を合計すれば暗号資産の取引高は世界1位になります。
米ドルやテザー(USDT)は米国人以外も使用することがある通貨なので、この取引高をそのまま米国の取引高と見做す事はできませんが、それでも取引が非常に盛んな暗号資産大国である事は間違いありません。
暗号資産への規制
米国は資本主義の国、起業を奨励し新しいビジネスを生み育てる文化を持つ国だけに、暗号資産(仮想通貨)に対しても比較的好意的で、当初は厳しい規制には否定的なスタンスを取っていました。
この姿勢の恩恵を受けて、幾多の有望な暗号資産プロジェクトが米国で発展してきたのは確かです。
ただ一方ではICOを悪用した詐欺なども相次いで表面化し、看過できない事態になってきました。
そのため米国では次第に規制を掛けて投資家を保護する動きが進んで行くことになります。
州ごとに違う規制
米国全体の仮想通貨規制については米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)が中心になって進められています。
但し米国では州政府の自治権の範囲が非常に大きく、日本の都道府県とは比較にならない権限を持っています。
そのため暗号資産の規制状況も州によって大きく異なります。
ニューヨーク州などは規制がかなり厳しく、州内で営業をする事業者に対して州のライセンスを求めています。
規制の中心「SEC」
米国では米国証券取引委員会(SEC)が暗号資産の規制に対して大きな影響力を持っています。
SECは暗号資産(仮想通貨)やトークンと呼ばれるものが、証券取引法上の「証券」に該当するか否かという観点から検討を重ねています。
2018年時点ではSECはイーサリアム、リップルや多くのICOトークンが有価証券に該当する可能性が高いとの見解を示しています。
コインが有価証券であると認定された場合には、そのコインを扱う暗号資産取引所などは米国の証券取引法によって規則される事になります。
但し同年6月15日には、SECのCF部門責任者ウィリアム・ヒンマン氏が「ビットコインとイーサリアムは有価証券には該当しない」との見解を明らかにしています。
その後SECは、イーサリアムについては有価証券ではないと認定しましたが、リップルや多くのICO案件についての判定は出されませんでした。
世界経済の中心とも言える米国で暗号資産の規制に関する判断が下されると、世界各国の規制も同様の方向へと舵を取る傾向が高く、事実上の国際標準となっていくケースが多いです。
暗号資産ETF
米国の暗号資産市場で注目されるもう一つの重要なテーマが、暗号資産のETF(Exchange Traded Fund/上場投資信託)です。
米国では多くの投資会社がSECにビットコインETFの上場申請をしています。
2019年9月時点ではビットコインETFの申請は全て却下されていますが、それでも近い将来にビットコインETFの上場が認められる可能性は高いと見られています。
ビットコインETFが上場されれば暗号資産投資市場への機関投資家達の参入が加速するとみられ、暗号資産市場に火が付くが可能性が高いと見られています。
過去には金(ゴールド)のETF上場によって金の価格が高騰した経験もあり、ビットコインETFが暗号資産市場の起爆剤となると期待されています。
米国の情勢や規制は世界各国の暗号資産市場に影響を与えるので、その動きには注意をする必要があります。
ICOへの規制
米国証券取引委員会(SEC)のICOに対するスタンスは、元々ICOを全面的に禁止する様な方向では無く、現行の規制の枠の中で適切な基準を設定し、ICO案件を認めて行くというものでした。
ところが2016年に巨額のICO資金が流出する「The DAO事件」が発生したことを機に、米国ではICOを規制していく姿勢を強めて行きます。
The DAO事件の調査を進めた米国証券取引委員会(SEC)は、The DAOのICOで販売されたDAOトークンは有価証券であるとの判断を示します。
有価証券は政府の認可を受けた証券会社などの金融機関しか取り扱うことができません。
これにより、今後米国で販売されるICO案件の殆どが無認可となり、証券法の処罰の対象となる可能性が出てきました。
2017年7月、米国証券取引委員会(SEC)は、有価証券と判断されたトークンを販売する際にはSECに登録する義務があるとの見解を示しました。
原則として取引を扱う取引所もSECへの登録が必要となります。
また未登録の販売業者からトークンを受け取った場合は、投資家自身も違反を問われる可能性があるという厳しい内容が示されています。
以降SECは米国でICOの販売を行なう取引所やプラットフォームに対して登録を義務化し、規制を強化して行きます。
2018年2月6日に開かれた米国上院議会の公聴会では、SECのジャイ・クレイトン委員長がICOにおける規則に関わる問題を提起しました。
また米商品先物取引委員会(CFTC)からは、暗号資産関連の取引に関する消費者の保護のために法整備が必要との提起がされています。
また2018年11月9日には、SECが実際に分散型取引所Either Deltaの創設者・ザッケリー・コバーン氏を起訴するなどの措置を実施しています。
Libraの衝撃
2018年、米国の金融関係者に大きな衝撃を与える暗号資産のプロジェクトが発表されました。
フェィスブック社が中心となって進める暗号資産プロジェクト「Libra」です。
Libraはフェイスブック等が出資する合弁会社「リブラ協会」が運営する暗号資産プロジェクトです。
法定通貨などと価格を固定させた、ステーブルコインと呼ばれるタイプのコインです。
2018年のLibraのプロジェクト発表時には、フェイスブックの他にも国際的なクレジットカード会社のVISAとマスターカード、eコマースのPayPalやeベイ、更にはUberやBooking.com、スポティファイ (音楽配信)などそうそうたる企業27社が集結し、国際企業連合の様相を呈していました。
法定通貨を脅かす存在
Libraには、経済的な影響力が非常に大きいグローバル企業が多数参加表明をしたため、計画発表時からLibraが法定通貨を脅かす存在になる事が予想されました。
Libraが決済で使われる機会が増えれば 、法定通貨からリブラへの大規模なシフトが起きる可能性が大きいと考えられたのです。
同じ時期にSNSのFacebookから個人情報が大量に流出するという問題が起きていた事もあって、米国を中心にフェイスブック社による情報管理・情報搾取を警戒する声が大きくなります。
暗号資産のLibraに対しても「Facebookが通貨を発行する」として強い警戒感が生まれました。
2019年6月には米国連邦議会の下院金融委員長がLibraの開発中止を要請したとCNBCが報じています。
以降もパウエルFRB議長など政財界の要人が相次いでリブラに否定的な見解を述べ、実際に圧力を掛けています。
次第にLibraのプロジェクトもトーンダウンし、VISAなどの企業が相次いで計画からの離脱を表明しています。
それでもLibraの開発計画自体が米国の通貨当局、世界の金融に大きな衝撃を与えたことは間違いありません。
まとめ
米国は新しいビジネスの芽を摘まず、むしろ積極的に育てることで経済を活性化し、世界最大の経済大国であり続けている国です。
暗号資産に対しても、必要な規制は掛けながらも、市場の発展をできるだけ妨げない方法を模索しています。
そうした米国の起業文化・環境の中で、暗号資産プロジェクトが続々と生まれています。
やはり今後もしばらくは世界の暗号資産市場の中心地であり続けそうです。
米国の暗号資産環境は世界の動向にも大きな影響を与えます。
是非注意深く、その変化を抑えて行って下さい。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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