(2022.01.25.改訂)
Dai (DAI)
Dai(DAI)は、米国ドルに連動させて1DAI≒1ドルに価格が固定するように設計された暗号資産(仮想通貨)です。
MakeDAOという組織がDAIを発行しています。
DAIの様に米ドルやユーロなどの法定通貨やその組み合わせなどに価格を連動させるコインをペッグ通貨あるいはステーブルコインと呼んでいます。
米ドルのペッグ通貨としてはテザー(USDT)が有名ですが、専門化の間ではDai(DAI)の方が透明性が高く信用できるという声も少なくありません。
通貨記号はDAI。1.07兆円の時価総額を誇り、時価総額ランキング22位に付けています*。
■通貨名称 Dai
■通貨単位 DAI
■時価順位 22位*
■通貨単価 115.2円*
■時価総額 1.02兆円*
■公開時期 2019年11月
■発行上限 11億DAI
■通貨区分 ERC20規格トークン
■公式ホームページ
(* 2022.01.01. CoinMarketcap公開データより集計)
MakerDAO
MakerDAOは米ドルとリンクさせた信頼できるステーブルコインを開発する事を目的にデンマーク出身のルネ・クリステンセン(Rune Christensen)氏が2014年に創設したプロジェクトです。
クリステンセン氏はコペンハーゲンビジネススクール、コペンハーゲン大学を経て国際的人材スカウト会社 Try China社の共同設立者となった経歴を持つ人物です。
但しMakerDAO自体は自律分散型組織といわれる組織で、管理者も社員も無く予め設定された手順に従って自動的に取引や作業を処理して行きます。
クルステンセン氏であっても自由にそれを変える事はできません。
管理者のいないMakerDAOをサポートする組織としてDai財団(DaiFoundation)という組織があり、プロジェクトのバージョンアップなどを担っています。
MakerDAOのプロジェクトに対しては、2018年9月に米国の有力なベンチャーキャピタルであるアンデルセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)が、自身の投資ファンド a16zを通じて1500万ドルを投資しています。
アンドレッセン社はディフィニティ(Dfinity)やコインベース(Coinbase)といったプロジェクトにも投資実績があり、暗号資産の世界に大きな影響力を持っています。
今回のMakerDAOへの投資によってアンドレッセン社はDAIとセットで発行されたコインであるMKRトークンの総供給量の6%を獲得しています。
2つのコイン
MakerDAOでは「Maker (MKR)」と「Dai (DAI)」の2種類のコインを発行しています。
DAIは冒頭でも述べた通り、1DAI≒1ドルに価格を固定させる様に設計されたステーブルコインです。
一方のMaker(MKR)はMakerDAOのシステムの中で、DAIを取引する際の手数料を支払う為のコインとして開発されました。
つまりMaker(MKR)とDai(DAI)は互いに連動するコインとして開発されたものなのです。
Dai(DAI)の特長
Dai(DAI)の特長、メリットとしてはどの様なものがあるでしょうか。
主なものとしては以下の項目が挙げられます。
●価格が安定している
●発行上限がある
●透明性の高い仕組み
●預けるユーザーにもメリットがある
価格が安定している
Dai(DAI)はドルに連動したステーブルコインなので価格は1DAI≒1ドルに安定しています。
MakerDAOでは担保付債務ポジション(Collateralized Debt Positions/CDP)という仕組みによってDAIの価格の安定を実現しています。
更にMakerDAOではMarker(MRK)とDAIの価格を連携させることで1DAI≒1ドルに価格を誘導しています。
価格変動するMRKトークンが価格変動を吸収することでDAIの方は1ドルの価格に維持されるという仕組みを採用しています。
CDPは簡単に説明すると暗号資産の担保を基にDAIを発行して融資をする仕組みです。
CDPでは人が審査して融資を実行するのでは無く、スマートコントラクト機能によって自動的に契約から融資の実行迄を行います。
利用者は担保資産としてイーサリアム(ETH)を差し入れるとETHの評価額の2/3相当のDAIを引き出す事ができます。
MakerDAOの規定を見ると、発行したDAIに対して150%の担保価値が必要という事になっています。
従って担保の2/3までのDAIを引き出せる事になる訳です。
評価額に対して1/3相当の余力を持つ事で、イーサリアム(ETH)の価格変動があってもある程度の耐性を持つ様に設計されています。
ただそれでもイーサリアム(ETH)の価格が更に下がって余力を維持できなくなるとDAIは強制的に精算され、担保資産のイーサリアム(ETH)からペナルティ料や手数料を引いた残額が返却されます。
こうしてシステムが崩壊しない制度設計をしています。
※イーサリアム(ETH)は正確には通貨名はイーサですが、本サイトではイーサリアム(ETH)と表記しています。
発行上限がある
MakerDAOでは、債務上限として1億ドルの上限を設定しています。
これはDAIの総発行枚数上限が1億ドル相当、すなわち1億DAIである事を意味しています。
DAIはMakerDAOにとっては債務と位置づけられる為、その金額に歯止めが掛かっている事はシステムの信頼性に寄与しています。
債務上限はMakerDAOが勝手に引き上げる事はできません。
既存のステーブルコインの問題点
米ドルに価値を固定したステーブルコインとしてはテザー(USDT)が知られており、時価総額も大きいコインです。
テザー(USDT)では、テザー社(Tether Limited)に米ドルを預けると1ドルにつき1USDTのテザーが発行されます。
預けた米ドルはテザー社によってプールされる事で1USDTには1ドルの裏付けを持つ仕組みになっています。
ただこの場合はテザー社が中央集権的に資産を管理している為、万ーテザー社が経営破綻をした場合に資産が保全できるのか、あるいはテザー社が不正を行なう可能性があるという問題があります。
実際、テザー社の資産管理の不備や疑惑はこれまで何度も指摘されており、ニューヨーク州当局から業務改善命令を受けたこともあります。
分散型管理のステープルコイン
これに対しDAIではMakerDAOを分散型管理する事によってステーブルコインを実現しています。
資金の管理はMakerDAOの組織や人では無くCDPというシステムが実行します。
イーサリアム(ETH)を担保として差し入れると、CDPが担保資産の評価額に応じたDai(DAI)を自動で発行すると共に、イーサリアム(ETH)をロックします。
ロックされた担保資産はMakerDAOが勝手に引き出す事はできません。
(※より正確にはETHをPETHと言うコインに変換してPETHをロックします。技術的にはETH>WETH>PETHと変換されます。)
DAIは分散型管理で不正が入り込む余地を無くし管理会社の破産リスクも回避できる、信頼性の高いシステムと言えます。
預けるユーザーにもメリットがある
ここで疑問が生じるかも知れません。
担保にイーサリアム(ETH)を預けて、最大でも評価額の2/3しかDAIが発行されないのであれば預ける人がいないのでは無いかと言う疑間です。
ところがこれはユーザーにも充分にメリットがある仕組みなのです。
例えばイーサリアム(ETH)が値上がりすると考えて購入している場合、他に有望だと考えるコインがあっても、 通常であればイーサリアム(ETH)で対象のコインを購入するか、 あるいは別に購入資金を用意するしかありません。
ところがMakerDAOのシステムを使えば、預けたイーサリアム(ETH)はそのままに引き出したDAIを使って対象コインを購入したり、他の投資に回す事が可能になるのです。
自分の資金を最大1.66倍のレバレッジを効かせて利用する事ができるという事です。
投資家にとっては大きなメリットがある仕組みと言えます。
安定化手数料
Dai(DAI)を返却すると預けていた担保資産を引き出せますが、その時にはローンと同じ仕組みなので金利(安定化手数料)が発生します。
この手数料の支払いはMakerDAOが開発したもう1つのコインMaker(MRK)で行なう仕組みになっています。
Maker(MRK)を取引所などで入手して手数料を支払うと言う流れになります。
CDPで手数料の支払いに使われたMaker(MRK)はバーンと言う処理をされて消滅します。
Dai(DAI)のデメリット
Dai(DAI)のデメリットとしてはどの様なものがあるでしょうか。
主な項目としては
●競合コインが多い
●ドルと完全には連動しない
●国内の取引所で購構入できない
と言った項目が挙げられます。
競合コインが多い
ステーブルコインは競合の多い分野であり、 激しい競争の中でDAIが生き残っていけるかという点は不安材料として存在します。
米ドルとのペッグしている主なステーブルコインだけでも以下の様なコインが存在しています。
テザー(USDT)
現在最大の時価総額を誇るステープルコインの代表格です。
テザー社(Tether Limited)が中央集権的に管理しているコインで、テザー社の管理する銀行口座に米ドルを預けると同量のテザー(USDT)が発行されます。
USDコイン(USDC)
米ドルを担保に発行するタイプのステーブルコイン。
米国で電子マネ一事業の実績を持つサークル社(Circle)が開発し、大手取引所のBitMainなども出資しています。
他にも米ドルにペッグしたコインは多数存在しますし、米ドル以外の法定通貨や中には金の価格にペッグしたコインなどもあります。
DAIの分散型管理のシステムは信頼性が高く透明性の点では頭一つ抜けている感がありますが、今後は更にユーザーを拡大してステーブルコインのスタンダードとして認知されていく必要があるでしよう。
ドルと完全には連動しない
DAIは米ドルと価格が連動(ペッグ)しているコインですが、その方式は「ソフトペッグ」 と呼ばれるもので、完全にドルの価格と連動する訳ではありません。
ドルとDAIの価格には乖離が発生する可能性があり、過去には1ドル=0.95DAIまで乖離した事もあります。
国内の取引所で購入できない
DAIは、日本の取引所では取り扱っている所が無く購入する事ができません。
⇒2022年2月末に国内取引所CoinBestで取扱いを開始すると発表がありました。
海外であれば、有力取引所の多くで取り扱われており、流動性もあるので取引しやすいコインと言えます。
2022年1月現在、DAIを上場している主な取引所は以下の通りです。
・バイナンス
・コインベース・エクスチェンジ
・クラーケン
価格の見通し
2022年1月1日現在、DAIの価格は115.2円を付けています。
DAIの価格は1DAI≒1ドルに固定されているので基本的には投資対象とはなりません。
米ドルの方が余程買いやすいですし信用もあります。
ただ完全に1DAI=1ドルに固定されている訳では無いので、価格の乖離を逆手に取った投資方法は存在します。
実際、DAIは頻繁に1ドル以下の価格を付けています。
上級者向けの方法なので詳しくは説明しませんが、価格が1ドルから垂離した時に大量にDAIを買って価格が1ドルに接近して行くのを待つといった方法などがあります。
あるいはDeFiを使った投資にもステープルコインは利用価値があります。
もちろん実際の取引は御自身の判断、自己責任でお願いします。
OMGと連携
2018年4月、MakerDAOは東南アジアを中心に人気の有る暗号資産OmiseGO(現OMG)との提携を発表しました。
OMGとのコラボレーションによって次世代金融ツールの実現を進めていく計画でMakerDAOの担保資産にOMGを加えるなどの展開を見せています。
利息が貰える機能を開発中
DAIではDSR(DAI Savings Rate)という機能の実装へ向けて開発を進めています。
DSRが実装しされると、DAIの保有者がのスマートコントラクトにDai(DAI)をロックする事で利息を得る事ができるようになります。
DAIの利用方法の幅が大きく拡がる機能と言えます。
まとめ
Dai(DAI)は非常に良く考えられた透明性の高いシステムを持つステーブルコインです。
MakerDAOは暗号資産(仮想通貨)の機能を存分に利用したローンシステムと言っても良いかも知れませんが、 制度設計がしっかりした信頼性の高い仕組みとして評価されています。
ただ不確実性を取り込んでいるので完壁なシステムではありません。
ステーブルコインの分野は競合が多く、テザー(USDT)を始めとするコインとの競争にどう生き残って行くかの戦略も重要です。
分散型ステープルコインとしては最大規模のコインなので、今後優位性が認知されていけばステープルコインの主役の座に就く事になるかも知れませんね。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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