美術品のNFT化
2021年7月26日、世界三大美術館の1つに数えられるエルミタージュ美術館(ロシア)が所蔵品をNFT化するプロジェクト「Your token is kept in the Hermitage」を発表しました。
今回の対象にはゴッホやダ・ビンチ、モネらの作品が含まれ、マーケットプレイスで販売もされるということでNFT市場、アート市場の双方に特大のインパクトを与えることは確実です。
今回はエルミタージュ美術館のNFTプロジェクトの内容とNFTアートの可能性を紹介します。
NFT(Non Fungible Token)の概要については別の記事を参照下さい。
エルミタージュ美術館
ロシア・サンクトペテルブルクにあるエルミタージュ美術館(Hermitage Museum)は、フランス・パリのルーブル美術館、米国ニューヨークのメトロポリタン美術館と並んで世界三大美術館に数えられる超一級の美術館です*。
ロシア帝国時代に建てられた豪華絢爛な宮殿の建物自体が歴史地区と共に1990年に世界遺産に登録されています。
エカテリーナ2世の時代に集められた収集品を中心におよそ300万点、世界最大級の美術品を誇るロシア国立の美術館です。
中でもレオナルド・ダ・ヴィンチ、ラファエロに代表されるイタリア美術、レンブラントやルーベンスなどの作品のコレクションが世界的に知られています。
*スペイン・マドリードのプラド美術館を加えて世界四大美術館と称されることもあります。
エルミタージュのプロジェクト
このエルミタージュ美術館が、レオナルド・ダ・ヴィンチやフィンセント・ファン・ゴッホの名画をNFT化するプロジェクト「Your token is kept in the Hermitage」を発表しました。
直訳すると「あなたのトークンはエルミタージュに保管されている」という意味です。
エルミタージュ美術館が所蔵するダ・ヴィンチやゴッホなどの作品のデジタルコピーをNFT化するというものです。
NFTは2枚だけ!
1枚の作品につきNFTが2個作成されて、片方はエルミタージュ美術館が保管します。
そしてもう1つはオークションに出品されて一般に販売されるのです。
作成された2枚のNFTには、エルミタージュ美術館の館のミハイル・ピオトロフスキー館長のサインや日付などが組み込まれます。
NFTは世界的な仮想通貨(暗号資産)の取引所であるバイナンス(Binance)のNFTマーケットプレイスで2021年8月末にもオークションに出品される計画です。
NFT作品は2021年秋にエルミタージュで開催されるNFT展覧会でも展示される予定です。
今回のプロジェクトでNFT化が決まっている主な作品は以下の通りです。
●レオナルド・ダ・ヴィンチ「Madonna Litta」
●フィンセント・ファン・ゴッホ「Lilac Bush」
●クロード・モネ「Corner of the Garden at Montgeron」
●ジョルジョーネ「Judith」
●ワシリー・カンディンスキー「Composition VI」
プロジェクトの特徴
今回のNFTプロジェクトはいくつかの点で大きな魅力を持っています。
これまでNFT、特にNFTアートに対しては懐疑的な意見も多かったのですが、そのいくつかを退け、NFTの可能性を大きく拡げるものでもあります。
ではこのNFTプロジェクトにはどの様な特徴・メリットがあるのでしょうか。
主なメリットとしては以下の様な項目が挙げられます。
●世界に2つしか無い希少性
●市場に出ない作品が手に入る
●絵画に取って代わる可能性
世界に2つしか無い希少性
何と言っても世界に2つしか無いNFTという希少性が担保されていることが大きな価値と言えます。
1つは美術館に収蔵されることで、市場に出るのは僅か1つ、それも美術館の収蔵品と同じものが手に入るということでNFTの価値を認める人が飛躍的に増えると考えられます。
市場に出ない作品が手に入る
今回NFT化される作品はエルミタージュ美術館が誇る超一級の作品ばかりです。
いくら出しても欲しいという人がいる一方でオークションなどの市場に出される可能性は殆どありません。
NFTという形で、絶対に買えない作品の「オリジナル」が買えるとなれば確実にニーズは発生します。
絵画に取って代わる可能性
デジタル資産であるNFT作品は実際の絵画に比べると圧倒的に管理が容易でコストも低くなります。
また万が一火事などで元の絵画が焼失する様な事態に陥った場合にはこのNFT作品が「本物」として認識されていく可能性もあります。
プロジェクトの問題点
一方今回のプロジェクトの問題点としてはどの様なことが考えられるでしょうか。
主な問題点としては以下の様な項目が挙げられます。
●再NFT化の可能性
再NFT化の可能性
今回は発行主体がロシア国立のエルミタージュ美術館ということで再NFT化の可能性は少ないですが、一般論で言うと再度同じ作品のNFTが作成されて売りに出される可能性が当然あります。
同じ作品のNFTが増えれば希少性は薄まり、必然的に価値が下がることになります。
但しNFTが再作成された場合でも、長期的には最初に作成されたNFTが「オリジナル」のNFTと認識されて初期NFTに人気が集中するという市場が形成されていくと考えられます。
まとめ
エルミタージュ美術館とバイナンスが連携してアートとNFTの新しい可能性を示してくれました。
NFTだから即価値がある訳では無く、そこにしっかりした妥当性、説得力を持つことが重要だということが良く分かります。
今後他の美術館も同じ様な展開を見せて行くことは確実で、アート市場が空前の活況になるかも知れません。
こうした動きをしっかり見据えてNFTの新しい流れを掴まえて下さい。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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