各国の暗号資産環境について
コイン資産倶楽部では、各国の暗号資産(仮想通貨)の市場やブロックチェーン・プロジェクトの状況などを纏めています。
各国の暗号資産状況、最初にお伝えするのは日本の暗号資産環境です。
日本はビットコインの取引高では世界1位を記録したこともある暗号資産大国です。
間違い無く、世界の暗号資産市場に影響を与える国の1つです。
まずは日本の暗号資産環境について、一度確認しておきましょう。
各分野の詳細についてはそれぞれ別の記事で展開して行きます。
暗号資産大国日本
日本は暗号資産(仮想通貨)について、世界的に見ても取引が盛んな国の1つと言えます。
ビットコインという名前がまだ一般に知られる前からビットコインの取引が盛んでした。
一時は世界の暗号資産取引量の約4割を占めたことさえあります。
日本独自のコインであるモナコインなども開発されて独自のコミュニティの盛り上がりも見せています。
反面暗号資産やブロックチェーン技術を使った社会変革に対しては歩みが遅く、保守的な面を見せています。
日本の暗号資産投資の環境はどの様なものなのでしょうか。
日本
日本は約1億2600万人の人口を抱え、経済的に非常に豊かな国として広く知られています。
国民総生産(GDP)では現在でも米国、中国に次いで第3位の座にあり、文字通り世界有数の経済大国です。
■国名 日本国
■首都 東京
■人口 1億2593万人*
■面積 37.8万平方km
■GDP 4兆9718億ドル(3位)**
■通貨 円(1ドル≒107円)
* 2019年IMF発表データによる。
**2018年度IMF公開名目GDPデータによる。
日本の暗号資産環境のメリット
日本の暗号資産環境のメリットとしてはどの様な点が挙げられるでしょうか。
主な項目としては
●暗号資産の市場が大きい
●暗号資産取引に関しては比較的寛容
●投資家保護が手厚い
といった点が挙げられます。
日本の暗号資産環境のデメリット
日本の暗号資産環境のデメリットとしてはどの様な点が挙げられるでしょうか。
主な項目としては
●国内で扱えるコインが少ない
●投資家に不利な税制
●ICO、IEOへの参加が難しい
といった点が挙げられます。
世界で初めて暗号資産を法律で規定
日本では2017年4月に、世界に先駆けて暗号資産を定義し、関連する規制を定めた「改正資金決済法(通称仮想通貨法)」が制定されました。
この法律によって
●仮想通貨の定義
●仮想通貨交換業の定義
●仮想通貨交換業社の規制
が決められました。
尚「仮想通貨」の名称は、その後2020年5月に「暗号資産」に変更されています。
世界各国が暗号資産に関する法整備を議論している中、日本がいち早く暗号資産を定義したことで、日本が今後の世界の暗号資産業界をリードする立場になるのではとも言われました。
ところがその後の法整備では対応の遅れを指摘されることも少なくなく、日本が暗号資産ビジネスの発展から取り残されてしまうリスクも抱えています。
ようやく2020年に入って「デジタル通貨」全体の推進を計る動きも活発してきて、今後の動きが注目されています。
暗号資産取引規制
日本では政府は投資家保護の点では法規制を進めながらも、暗号資産(仮想通貨)の利用普及に関しては厳しい制限をせず、阻害しないという基本スタンスを取ってきました。
2017年10月には金融庁が、暗号資産取引が仕組みによっては資金決済法や金融商品取引法等の規制対象となるとの見解を発表しています。
日本では基本的に暗号資産取引を禁止する意向は見られませんが、しっかりと金融庁の監督下に置いて投資家保護の体制を整備しようとしています。
また国内の暗号資産交換業者はいずれも本人確認書類の提出が必須となっている為、基本的に匿名取引ができない制度となっています。
それでも中国や韓国と比べると個人の暗号資産取引に対しては寛容と言えます。
但し2018年1月にコインチェックで発生したネム(XEM)の大量流出事件を機に、政府としても指導管理を厳しくせざるを得なくなりました。
現在日本の暗号資産取引所では、金融庁の審査を受けて「ホワイトリスト」に登録されたコインしか事実上取り扱うことができません。
そのため、取扱コインの種類が海外の取引所に比べて極端に少ないという問題があります。
ユーザー保護のための規制で投資家の選択肢が制限された形となっています。
取引所への規制
2017年4月の改正資金決済法によって、暗号資産交換業は内閣総理大臣の認可を受けた仮想通貨交換業者(現暗号資産交換業者)のみが行えることとなました。
そのため既存の業者や新規参入業者は、交換業者としての登録が必要になり、2017年9月末には10社が仮想通貨交換業として金融庁に登録されました。
一方では暗号資産交換業者への要求基準が厳しいことから、登録申請を取り下げる企業も出ています。
2018年3月8日には金融庁が暗号資産交換業者2社を業務停止、5社に改善命令を出しました。
これによって暗号資産交換業者3社が事業から撤退しています。
2018年6月には新たに暗号資産交換業者6社に業務改善命令が出されています。
改善命令を受けたのは
●ビットフライヤー
●QUOINEX
●bitbank
●BIT Point
●Zaif
●BTCボックス
の6社で、マネーロンダリング対策を含む内部管理体制に問題があったと指摘されています。
これによって当時の国内の主要な暗号資産交換業者の殆どが業務改善命令を受けた事になりました。
同年9月3日には、金融庁が暗号資産交換業者の審査厳格化を決定しました。
書類審査の質問事項が100項目から400項目に増えた他、取締役会の議事録も提出させ、株主構成も定期的にチェックするとしています。
海外取引所へも警告
また金融庁は海外の取引所、交換業者に対しても、日本人向けに暗号資産取引のサービスやトークンセールを実施することに対して警告書を送るなど、厳しい措置を行ないました。
2018年6月には、日本語に対応していた海外の暗号資産取引所5社が、相次いで日本居住者向サービスを停止することを発表しました。
日本向けサービスの停止を表明したのは
●HitBTC(6月3日発表)
●Huobi(6月27日発表)
●Kurakuen(6月29日発表)
●Kucoin(6月29日発表)
●BigONE(6月29日発表)
の5社になります。
日本での資金決済法の影響と見られています。
ICO規制
2017年4月に制定された改正資金決済法ではICOを想定しきれておらず、法的な措置が示されていませんでした。
そのため日本ではICOそのものについては禁止しませんでしたが、一方でICOを取り扱う事業者は暗号資産交換業の登録を受ける必要があるとの見解を金融庁が発信していました。
日本人向けにICOを実施するためには、暗号資産交換業者としての登録が必要になる訳です。
ところが金融庁は、2018年1月の2次登録以降1年以上に渡って、暗号資産交換業者の新規登録を認めなかったので、結果として国内ではICOが行われないという状況になっていました。
2018年11月26日、金融庁は「仮想通貨交換業等に関する研究会」で、暗号資産技術を使った資金調達(ICO、IEOなど)に対する規制について議論しました。
そこで配当や利子を出すなど投資とみなすICOについては一般投資家への販売・流通を制限し、ICOを取り扱う事業者には金融商品取引法(金商法)に基づく登録制度を検討するべきとの方向性が改めて示されました。
例えば株式投資の場合は、日本証券業協会が自主規制ルールを定めていて、非上場株式の機関投資家以外の人への営業・勧誘を禁止しています。
こうしたルールに準ずる形で制度を整備して行くことになります。
自主規制団体
暗号資産交換業については、2018年3月1日に設立され、10月24日に金融庁の認可を受けた「一般社団法人日本暗号資産取引業協会(JVCEA)」が業界団体として存在し、取引所のセキュリティ体制や運営体制の自主規制ルールなどを作成しています。
2018年7月25日には暗号資産の証拠金取引の最大レバレッジを4倍以内とする自主規制ルールを定めました。
JVCEAには金融庁登録の暗号資産交換業者が加入しています。
2020年7月時点では、第一種会員25社、第二種会員7社が加入しています。
投資家に不利な税制
2020年7月現在、日本では暗号資産取引で得た利益は「雑所得」として扱われます。
税金の分類から見ると競馬の馬券や競艇の舟券と同じ扱いであるとも言えます。
雑所得は給与所得などの所得と合算して所得税率が決まられるため、最大で45%+復興特別税という税率になります。
しかも雑所得で損失が出た場合には、他の所得と相殺して税率が下がるような仕組みはありません。
非常に投資家に取っては不利な税制と言えます。
暗号資産が金融資産として健全な発展をして行くためには、株式投資と同じ様に、他の所得とは収入を分けて個別に税率が決まる「分離課税」方式が導入される必要がありそうです。
投資信託
2018年10月15日には暗号資産を投資対象とした投資信託「ティジアセ」が日本で公募開始されました。
暗号資産やトークン、 ICOに加えて、マイニング、レンディング、デジタルインフラ会社などを投資対象とした投資信託商品です。
ティジアセの日本での募集金額上限は1,000億円に設定されています。
2020年7月現在、暗号資産取引の利益は雑所得の扱いですが、ティジアセは投資信託なので株式と同じ申告分離課税として扱われるのが大きなメリットです。
つくば市のネット投票
日本では公的手続きのIT化が遅れていると言われ続けていますが、そうした中でもブロックチェーン技術を活用して利便性を高めて行こうという動きは見られています。
茨城県のつくば市では、2018年8月21日に日本初となる、ブロックチェーン技術を利用したネット投票の実証実験が行われています。
まとめ
日本は世界に先駆けて暗号資産の法定義に乗り出し、そのまま世界の暗号資産界をリードして行く存在になるかと思われましたが、その後の金融庁の対応は投資家保護に重点を置いた保守的とも言えるものでした。
暗号資産技術の変化の速さに付いて行けずにいるようにも思えます。
ただそうした日本でもデジタル円の実現を見据えた議論が始まるなど、確実に新しい動きが始まっています。
元々民間の暗号資産関連事業は活発で、個人投資家の市場も厚いので、一度官民の動きが噛み合えば、一気に発展する可能性を秘めていると言えます。
暗号資産市場の健全な拡大を進めていって貰いたいですね。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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