イーサリアムの代名詞的な機能
現在既に約2,000種類ものコインが存在すると言われる仮想通貨(暗号資産)の中で、ビットコイン(BTC)に次ぐ時価総額を誇っているコインがイーサリアム(ETH)です。
そのイーサリアム(ETH)の代名詞とも言える機能であり、仮想通貨(暗号資産) の可能性を大きく拡げる要素ともなっているのがスマートコントラクト機能です。
仮想通貨(暗号資産)の話をして行くと頻繁に出てくる言葉でもありますが、実際にはスマートコントラクトとはどの様な機能なのでしょうか。
自動販売機の仕組み!?
スマートコントラクト(Smart contract)とは、 プログラムに基いて自動的に契約が実行される仕組みの事です。
この概念が議論される様になった初期の段階から使われている例に「自動販売機」の仕組みがあります。
自動販売機は
①代金を受け取る
②商品のボタンを押される
③押されたボタンに対応した商品を出す
と言う契約を、①+②なら③と言う事前に設定されたプログラムに沿って自動的に実行していると考える事ができます。
仮想通貨にプログラムを書きこむ!?
自動販売機の例を出さなくても、例えばインターネットの世界などを覗けば既に多種多様なサービスが予め設定したプログラムに沿って自動的に動く様になっています。
自動的に実行される仕組みは社会の至る所に浸透しています。
仮想通貨(暗号資産)に通貨的な機能だけでは無く、自動執行のプログラムも書き込める様にしようと考えたのが、イーサリアムのスマートコントラクト機能だったのです。
イーサリアムにはブロックチェーン上に契約を記録し、更に契約を自動的に執行させるスマートコントラクト機能があります。
契約内容をプログラムとして記載し、条件が満たされたら契約を自動的に執行する事が可能です。
仮想通貨=通貨ではない
「通貨に契約を書き込む」と言うと非常にイメージがしにくいかも知れません。
日本円や米ドルに契約を書き込んでもどう使って良いか分からないですからね。
仮想通貨と言う言葉が理解を難しくしているのかも知れません。
イーサリアム以降の仮想通貨(暗号資産)の多くでは通貨自体を開発しているのでは無く、通貨的な機能を始めとして、さまざまなプリケーションを動かす事ができる土台となるシステム(プラットフォーム)を開発しています。
まずプラットフォームがあり、そのシステムを使って動くコインがあると言う関係になります。
であれば、そのシステム上で動くプログラムを書き込める様にすると言うのはむしろ自然な流れとも言えます。
社会を次々に自動化する
ただ前述の様に自動的に契約を実行する仕組みなら、既に世の中に溢れています。
重要なのはブロックチェーン技術を使ってスマートコントラクトを行なえると言う事です。
その事が今後の社会に非常に大きな影響を与えると考えられているのです。
スマートコントラクトでは契約が自動的に履行される為、 システムが信用できるのであれば、取引相手への信頼や仲介者が必要なくなります。
同時に確認などの作業も無くなって行きます。
社会には確認や承認を伴う作業が無数に存在していますが、スマートコントラクトによって、それらがことごとく自動化される可能性があるのです。これによって多くの取引で仲介業者を介さずに契約をする事が可能になります。
イーサリアムの発想
ビットコイン(BTC)を始めとする多くの仮想通貨 (暗号資産)では、 ブロックチェーン上にAからBへと移動したと言うコインの移動履歴を全て記録する事によって通貨の様に扱える様になっています。
預金通帳への記帳の様に、ブロックチェーンへの記録によって誰がどれだけのコインを|持っているかを証明できる訳です。
イーサリアムではブロックチェーン上にコインの移動履歴だけでは無く、もっと様々な情報(プログラム)を書き込める仕様にすれば、 さまざまな機能を持つ事ができると考えました。
イーサリアム(ETH)のブロックチェーンは非常に汎用性が高く、最初から柔軟な使い方ができる様に設計されています。
さまざまなアプリケーションを動かす事ができるスマートフォンの様なものだと言うとイメージしやすいでしょうか。
イーサリアム以降、多くの有カコインにスマートコントラクト機能が実装される様になりしばしば通貨的機能よりもスマートコントラクト機能を競う様になってきました。
スマートコントラクトでできる事とは
では具体的にスマートコントラクト機能を使って何ができるのでしょうか。
主な項目としては
トークンの発行
イーサリアム(ETH)ではスマートコントラクトを使って独自のコイン(トークン)を発行する事ができます。
誰もが安価に、 簡単に独自のコイン(トークン)を発行する事ができます。
イーサリアム以外でもNEO (NE0)やネム (XEM)、Wave(WAVE)と言った仮想通貨(暗号資産)が独自トークンの発行機能を持っています。
独自トークンの発行は、スマートコントラクトを使って一早く実現した成果の1つです。
イーサリアム(ETH)ではERC20と言うトークン規格を設定していて、イーサリアムの機能を使ってコイン (トークン)を発行すると、ERC20規格に準拠した安全なコインを創る事ができます。
ICOの実施
これはスマートコントラクトでと言うよりは間接的にできる事ですが、 セキュリティのしっかりしたコイン(トークン)を簡単に発行できる事になった事で、IC0と言う資金調達手段が実用化し、注目される様になりました。
ICO(Inicial Coin Offering)とは、 コイン(トークン)を発行·販売する事で資金を集める方法です。実際、 イーサリアムなどのコイン発行機能を使って数多くのICOが実施されており、数百億円単位の資金を集めるプロジェクトも幾つも生まれています。
画期的な資金調達方法と言えます。
音楽配信
音楽業界には、CD1つを取ってもレコード会社やCDショップ、 卸店など多くの仲介業者が存在し、利益の殆どはクリエイター以外の人が持って行きます。
CD発売から収入を得るまでに半年~1年もの期間が掛かる事もクリエイターにとっては問題です。
最近はインターネットを使った音楽配信に重心が移りつつありますが、仲介業者が多くの|利益を受け取る構造は尚残っています。
P2Pの音楽売買サービス 「Ujo music」では、 スマートコントラクトを利用する事によって|仲介業者を挟まずに音楽配信をする事ができます。
クリエイター側はより高い利益を即座に受け取る事が可能になります。
オンラインカジノ
ギャンブルでは取引が公正に行われている事をユーザーに納得させる為に信用のおける運営者が必要になります。
カジノの運営者などは自らの信用を獲得する為に有形無形の形で多大な費用と手間を抱えてカジノを運営しています。
スマートコントラクトを利用する事で、不正が行われないギャンブル·システムを構築する事ができます。
掛金の受け取りから結果の判定、 配当の支払い迄を自動的に執行する事で不正が発生せず、管理する人も費用も要らなくなります。
管理費用が無くなった分、 配当を高く設定する事ができます。
仮想通貨Augerではこうしたギャンブルの為のプラットフォームを開発しています。
本人確認
本人確認は多くの取引で必要とされている作業の1つです。
現在は運転免許証やパスポートの提出とその確認などを経て、本人確認を行なうケースも多いですが、偽造リスクもありますし、作業は双方に取って負担です。
スマートコントラクトによって本人確認を行なうサービスの開発は既にいくつものプロジェクトで進められています。
アクセスも制限も容易で改ざんのできない本人確認手段が整備されれば、こうした作業の殆どが不要になってきます。
不動産契約
複雑な契約の典型とも言うべきものの1つが不動産契約ですが、 その殆どは権利や関係者の証明·確認に費やされています。
この契約が公的に正しい事を証明するなどと言う作業まで発生します。
スマートコントラクトで本人確認が行えるのであれば、様々な権利を証明する事も可能になる筈です。
従って一連の作業をスマートコントラクトによって自動的に確認、承認、実行する事ができれば仲介者の作業が全て不要になります。
当然契約コストが劇的に下がる事も期待できます。
シェアビジネス
カーシェアやAirBなどのシェアリングビジネスでも作業の大きな部分を占めているのは取引相手や支払に対する信用の確保です。
スマートコントラクトでは契約から代金の支払いまで自動で執行させる事ができるので極端な言い方ですが、 システムが信用できれば取引相手を信用する必要がありません。
途中の確認作業を大幅に減らして中間費用を削減する事が可能です。
行政システム
実は行政のシステムこそスマートコントラクトで効果を生みやすい分野と言われています。
特に地方行政は登録、 確認、 承認作業の山でこれらの多くがスマートコントラクトに寄って技術的には自動化が可能と見られています。
但し多くの国では行政組織は急激な変化を拒む傾向が強く、 政府や自治体の決断に可否が左右される分野と言う事が言えます。
それでも既にエストニアなどでは国単位での導入が進められており、目覚ましい実績を上げています。
スマートコントラクトと仕事
近年AIを巡る議論がかなり浸透しています。
「AIが人間の仕事を奪う」と言う話を聞いた事がある方も多いと思います。
スマートコントラクトもまた人間の作業を自動で行なう仕組みです。
スマートコントラクトこそ、 さまざまな仕事を奪う技術と指摘する意見もある程です。
スマートコントラクトによって、社会にあるあらゆる仲介業務や承認業務を自動化するとしたら多くの職業が無くなります。
実際にはAIとスマートコントラクトは相反する技術では無く、重なって社会に展開されてきます。
この件については別に解説しますが、 おそらく後戻りできない流れとしてこれが有ります。
社会設計をどう考えて行くのかが、 これ迄以上に重要になってくる事は間違いありません。
まとめ
この様に事例を挙げていっただけでも実にさまざまな分野にスマートコントラクトの展開が可能だと言う事が分かります。
仮想通貨(暗号資産)は通貨的な機能と言うよりも、スマートコントラクト機能を使って何を実現するかと言う事が開発の中心になってきています。
今後その展開が更に進んで行く事は間違いありません。
もはや仮想通貨と言う言葉に惑わされる事なく、何を実現できるプロジェクトなのかに注目してそれぞれを見て行く必要がある様です。
あなたなら何を自動化して欲しいですか。
今日も最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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