金価格連動のステーブルコイン
2022年2月7日、三井物産デジタルコモディティーズ株式会社が、金の価格に連動する暗号資産「ジパングコイン(Zipangcoin)」の計画を発表しました。
日本の大手企業グループが仕掛けて国内上場するほぼ初めての暗号資産であり、法定通貨では無く金価格に連動するステーブルコインでもあります。
暗号資産への投資だけでは無く、金投資やコモディティ投資にも影響を与える可能性がある新しいコインです。
ジパングコイン
ジパングコイン(Zipangcoin)は、三井物産の100%子会社である三井物産デジタルコモディティーズ株式会社が発行し、国内交換業者として金融庁の認可を受けたデジタルアセットマーケッツが販売します。
今後は他の交換会社、取引所への上場も視野に入れているとの事です。
金の価格(ロンドン受渡の相対取引市場価格)に価格を連動させる事を目指します。
通貨記号(テッカ−)はZPG。
1ZPGは金現物1グラムと同等の価値を有する形に制度設計しています。
■通貨名称 ジパングコイン
■英語表記 Zipangcoin
■通貨記号 ZPG
■運用開始 2022年2月17日取引開始
■発行企業
三井物産デジタルコモディティーズ株式会社
■公式ホームページ
現物の金が裏付け
ジパングコイン(ZPG)はどの様にして金の価格に連動させようとしているのでしょうか。
三井物産デジタルコモディティーズではロンドン金市場(London bullion market)でジパングコイン(ZPG)の発行額と同額の金現物を調達してプールします。
この現物の金を価格の裏付けにする考えです。
将来的にはZPGと金現物を交換する機能も持つ計画になっています。
金本位制の時代のドル紙幣(金と交換できた)と同じ様な考えのコインとも言えます。
miyabiを採用
ジパングコイン(ZPG)は基幹となるブロックチェーンの技術に、bitFlyer Blockchain社が開発した「miyabi」という企業向けのブロックチェーン・サービスを採用しています。
miyabiは秒速4,000件という圧倒的な処理スピードと堅牢なセキュリティ技術、自由な設計対応が可能など多くの魅力を持つブロックチェーンです。
国内暗号資産交換会社大手のビットフライヤー・グループで開発された国産ブロックチェーンでもあります。
企業やプロジェクトがmiyabiを使ってブロックチェーン技術を使ったサービスを容易に構築する事ができます。
公開されたブロックチェーン(パブリックチェーン)としても使えますし、企業など限られた範囲で活用するプライベートチェーンとして使う事もできます。
2016年のサービス開始以降、既に住友商事や三井住友海上火災保険、マイクロソフトなど多くの活用事例があります。
三井物産コモディティ−ズ
ジパングコインを発行する三井物産デジタルコモディティーズ株式会社はジパングコインの展開を当面の目標に、2021年4月に設立された新しい会社です。
三井物産の100%子会社であり、殆ど三井物産の事業部隊と考えて良さそうです。
商品先物市場(コモディティ市場)のデジタル資産化を担う企業と捉えればイメージがしやすいでしょうか。
■企業名称
三井物産デジタルコモディティーズ株式会社
■本社所在
千代田区大手町1-2-1
■代表者
加藤 次男代表取締役社長
■会社設立 2021年4月
■公式ホームページ
デジタルアセットマーケッツ
一方、ジパングコインを販売する株式会社デジタルアセットマーケッツは三井物産やセブン銀行などが出資する暗号資産交換会社です。
2022年2月時点での取扱いはジパングコインのみという個性的な交換会社です。
2月8日から口座開設の申込受付を開始し、2月17日からジパングコインの取引を開始する予定との事です。
ジパングコインの特徴
ジパングコイン(ZPG)の特徴・メリットとしてはどの様なものが考えられるでしょうか。
主な項目としては以下のものが挙げられます。
●金投資の有力選択肢に
●小口投資が可能
●インフレヘッジ資産
●価格が安定している
●DeFi投資の可能性
インフレヘッジ資産
ジパングコインは「インフレに強い」「有事の金」と評価される金の価格と連動しています。
インフレヘッジ資産としての価値は高いと考えられます。
将来的に金現物の交換が可能になればヘッジ資産としての価値は盤石になります。
金投資の有力選択肢に
金を保有したい、金に投資したいという人は少なくないと思いますが、金の現物を持つことは実際には手間とコストが掛かります。
店頭で金を購入・売却する際にはかなりの額の手数料が発生するのが一般的です。
金取引大手の田中貴金属の店頭で金を買う場合、500g未満の購入の場合には手数料が発生します。
5gだと4,400円、100gだと16,500円も手数料が掛かります。
500g未満の金を売るときにも手数料は発生し、5gだと2,200円、100gだと16,500円です。
そもそも買取価格と売却価格には差があり、そこでも実質的な手数料が発生します。
手数料の面から考えると金の現物は魅力的とは言えないのです。
ジパングコインは他の暗号資産と同様に気軽に購入する事ができます。
販売所方式になるので買値と売値の差があり、これが実質的な手数料相当になりますが、店頭での売買に比べると費用は圧倒的に少なくなります。
金の購入には純金積み立てなど店頭での購入より費用の安い仕組みもありますが、それでもジパングコインの方が遥かに安くなるケースが多いです。
後は金の上場投資信託(ETF)や商品先物(CFD)といった金融商品と比べてどうかという話になります。
小口投資が可能
一般的な金の店頭での取引は1/10オンス金貨(3.1103g)が最小になります。
これに対しジパングコインは1ZPG以上1ZPG単位、または500円以上100円単位で購入する事が出来ます(デジタルアセットマーケッツ)。
金への小口での投資が容易にできるようになります。
価格が安定している
価格の変動が激しい暗号資産(仮想通貨)の世界で、金と価格が連動するジパングコインは値動きの安定したコインと考えられます。
法定通貨の価格とは連動していませんが、これも広義のステーブルコインと捉える事ができます。
価格が安定している事で決済への利用などにも使われやすい性格を持っています。
DeFi投資の可能性
レンディングや流動性供給といった分散型金融(DeFi)の分野で、ジパングコインは有効な投資ツールとして機能する可能性があります。
DeFi関連の投資ではステーブルコインのニーズが高く、低リスク・ミドルリスクでありながら魅力的な投資手段が数多くあります。
ジパングコインもステーブルコインの一種であるため、魅力的な投資商品に利用できる可能性が高いのです。
ジパングコインの問題点
一方、ジパングコインの問題点、デメリットとしてはどの様なものが挙げられるでしょうか。
主な問題点としては以下の項目が挙げられます。
●国際的な知名度が低い
●競合コインの存在
国際的な知名度が低い
ジパングコインは誕生したばかりのコインなので当然ではあるのですが、国際的な知名度はまだ殆ど無いと言えます。
国内でも知名度が高いとは言えず、このまま人気が低いままだと事業として継続できない可能性も無いとは限りません。
仮に事業を終了させる、あるいは発行企業が倒産した場合にも資産価値が担保される仕組みは持っているのですが、ジパングコインを利用した投資ができなくなる可能性は残ります。
競合コインの存在
金の価格と連携した暗号資産(仮想通貨)としては既にパクソス(Paxos)社がPAX Goldというコインを発行しています。
通貨記号は「PAXG」、パクソス社のフループ企業(Paxos Trust)で金現物を保有する事で価値を担保しています。
PAX Gold(PAXG)は2022年2月9日時点で419億円の時価総額を誇り、時価総額ランキング160位の実績あるコインです。
ジパングコインはこうした類似のコインとの競争に打ち勝って確固たる地位を獲得して行かなければいけません。
まとめ
ジパングコインは金価格に連動し、価格が安定しているコインという事で暗号資産投資としては関心が薄い人も少なくない様です。
ところがDeFiの発達などを経て、今やステーブルコインは暗号資産投資で大きな存在感を持っています。
ジパングコインもその勢力の一角を占める新しいコインと捉えるとその活用方法は大きく広がります。
商品先物の投資家達がまだこの商品を理解していないタイミングでジパングコインの活用を考えると良い投資が見つかるかも知れません。
今後の拡がりに注目ですね。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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